「嗅ぎつける」を英語で?【バリー・リンドン】

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本日も前回の『バリー・リンドン』でとりあげたこちらの同じシーンの続きから、セリフを抜粋してみました。

ついに雌雄を決したレドモンドとクイン大尉。
結果はレドモンドの勝利。
死んだように横たわるクイン大尉。
そんなシーンからの引用です。

上の動画では3:55からの部分。
映画本編でははじまってから25分12秒くらいのところです。

REDMOND : Is he dead?
MICHAEL : Quite dead. This has been a sad day’s work for our family, Redmond Barry. And you’ve robbed us of 1,500 a year. Now you’d better ride off before the Police are up. They’d wind of this business before we left Kilwangen.
HARRY : Come on, Redmond, I’ll go home with you.

レドモンド「死んだ?」
マイケル「死んだな。我が家にとっては悲しい1日の出来事となってしまったよ、レドモンド・バリー。いわば、きみは私たちから1500ギニーの年収を奪ったんだ。さあ、警察が動き出す前に逃げるがいい。やつらは我々がキルヴァンゲンを出るまでにこの件を嗅ぎつけていたかもしれん」
ハリー「行こう、レドモンド。送ってくよ」




目次

「嗅ぎつける」を英語で?

ここで注目したいのがこちらの一行。

They’d wind of this business before we left Kilwangen.
(やつらは我々がキルヴァンゲンを出るまでにこの件を嗅ぎつけていたかもしれない)

ここで wind(風)という単語が「嗅ぎつける」という意味の動詞で使われていますね。

辞書で調べてみたところ、wind は動詞になると「風に当てる」「風を通す」という意味の他に、「嗅ぎつける(気がつく)」という意味があるそうです。

しかし wind を「嗅ぎつける」の意味で使う場合、この『バリー・リンドン』の用例みたいに wind が直接動詞になるケースばかりではなく、wind を名詞にして

catch wind of
get wind of
have wind of

などの熟語で使われることも多いようです。

辞書によると、

wind 〜 = (猟犬が獲物の)存在を嗅ぎつける
catch wind of 〜 = 〜の気配を察する
get (have) wind of 〜 = 〜(の気配・噂など)を嗅ぎつける

と説明されています。

wind を動詞として使用する場合は「猟犬が獲物の存在を嗅ぎつける」と、ずいぶん限定的なことが書いてありますが、この『バリー・リンドン』のセリフみたいに「警察が事件の匂いを嗅ぎつける」場合にも適用できるものなんですね。
比喩的な使い方なのかもしれません。

そういえば日本では警察のことを「犬」って言いますもんね。

catch wind of の用例も他の映画からひとつあげておきます。

映画『美しい人(2005)』より
If I catch wind of anything, you’re gonna regret it.
(もし俺が何か嗅ぎつけようものなら、お前は後悔することになるぞ)

上の用例は、刑務所で囚人に対して看守が「もし裏で何か悪いことをしているのなら、自分から白状した方が身のためだぞ」と言っているセリフです。

ちなみに wind を過去分詞 winded にすると、以下のように「息がきれる」という意味の形容詞になります。

She’s winded from climbing up those fuckin’ steps.
(彼女はこのクソ階段を登りながら、息を切らしている)

上の文章はタランティーノの『キル・ビル vol.2』の脚本のト書きからの引用です。
ブライドがパイメイの寺院の長い階段を登るシーンです。
脚本のト書きに fuckin’ を使うところがタランティーノらしいですね。

それからちょっと紛らわしいことなので一応、言及しておきますが、wind は発音で意味がぜんぜん変わってしまう単語ですので、気をつけましょう。

wind が上記のように「風」「嗅ぎつける」「息が切れる」などを意味する場合は、「ウィンド」と発音しますが、これが、「ワインド」と発音する場合は、同じ綴りでも「曲がりくねる」「(ネジなどを)巻く」という意味になります。

身近な例でいうと、ビデオやDVDなどを「巻き戻す」ことを「リワインド(rewind)」って言いますよね。

「ワインド」と発音するほうの wind の用法もいろいろありますので、いつか別の記事でじっくり扱いたいと思います。

その他の注目ボキャブラリー

quite = まったく、完全に
quite dead のフレーズで使われており、DVDの字幕では「即死だな」と訳されていますが、quite に「即」という意味はないので、正しくは「これは完全に死んでいるな」というセリフです。

ride off = 馬に乗って去る

風見鶏

あとがき

本日は wind という単語の「嗅ぎつける」の用法を中心に、英語の勉強をしてみました。

ちなみにここのセリフに出てくる「キルヴァンゲン(Kilwangen)」は、『バリー・リンドン』だけに出てくる架空の都市名だそうです。
レドモンドたちがいるブレイディ村から10マイル(約16キロ)くらいの距離にあるという設定です。
スイスに同じような名前の都市がありますが、それとは関係ないとのことです。

クイン大尉はキルヴァンゲンの軍をまとめているという立場ですから、おそらく住んでいる場所もそこなんですね。
バリーのいとこのマイケルたちがその日クイン大尉を迎えに行ったときにはすでに、決闘が行われることは街で噂になっていた、ということなんでしょう。