「気にかける」を英語で?【バリー・リンドン】

18世紀のアイルランド軍の絵画

一文無しで逃亡の身となってしまった主人公レドモンド。

イギリス軍の募兵に出くわし、これ好機とばかりに入隊を決意します。

本日はこのシーンのナレーション文を引用して、英語のボキャブラリーを勉強してみます。

映画本編では35分6秒のところです。

For a young gentleman in difficulty who had killed a man in a duel and was anxious to find refuge from the Law, the opportunity to earn distinction in the European wars seemed a great stroke of good fortune. And King George was too much in want of men to heed from whence they came.
(決闘で人を殺め、法の裁きに追われる若者にとって、ヨーロッパ戦線で手柄を立て出世する機会は、まさに渡りに船だった。それにジョージ国王は兵力の増員を望むあまり、彼らの経歴を問うこともなかった)




heed と pay attention to の違いについて

このナレーション文で注目したいボキャブラリーがこちらの一節にあります。

King George was too much in want of men to heed from whence they came.
(ジョージ3世はあまりにも兵力が不足していたので、彼らの経歴を気にもかけなかった)

heed = 〜を気にかける、〜を心に留める、〜に気をつける

この heed と似たような表現で pay attention to がありますね。

pay attention to = 〜を気にかける、〜に気をくばる、〜に注意をはらう

pay attention to と heed はどう違うのか?

調べてみたところ

pay attention to は、ただ「〜を気にかける」だけ

なのですが

heed は「〜を気にかけて」さらに「それに対して何かしら対処をする

という意味合いが含まれているということです。

例えば誰かがアドバイスをしているのに、相手は上の空で聞いていない、みたいなとき、「Pay attention to me!」と言われたりしますよね。

この場合は「ちゃんと人が言っていることを聞け!」という意味で、「アドバイスをちゃんと生かしなさい」といった含みは薄いんですね。

あくまでも「その場そのときに相手がちゃんと聞いていない」という点に焦点が当てられているわけです。

つまり pay attention to の方が物理的な態度に言及しているんですね。

しかし heed の場合は、「ちゃんと注意をはらって、その内容を結果に反映させる」といった含みを持たせたい状況で使われるんですね。

この『バリー・リンドン』のナレーションの場合は、「ジョージ3世は応募してきた兵士候補たちの出自をチェックして、採用するかどうか判断する」ようなことをしなかった、という意味で使われています。

heed と pay attention to の用例を他の映画からいくつかピックアップしてみましたので、比べてみてニュアンスをつかむ参考にしてみてください。

映画『アダプテーション』より
So now, folks, you better heed that advice. Okay? Heed that advice. Stand by for picture.
(さあみんな、アドバイスをちゃんと聞くんだぞ。わかったか? アドバイスを聞くんだ。配置につけ)

上のセリフは、映画の撮影現場で、ベテラン俳優さんがスタッフたちに対してアドバイスをした後に、助監督がスタッフ全員に放ったセリフです。
ベテラン俳優さんのアドバイスをちゃんと踏まえて、今からの撮影に挑むように、という意味のセリフですね。

映画『十戒』より
Who am I, Lord, that you should send me? How can I lead this people out of bondage? What words can I speak that they will heed?
(主よ、この私が、あなたの遣いになるなんて、何者だおっしゃるのですか? どのように奴隷の身から皆をを救い出したらいいのでしょうか? どんな言葉をもって皆を導いたらよいのでしょうか?)

上のセリフは旧約聖書の映画化で、モーゼが神から「エジプト人の奴隷になっているヘブライ人たちを導き出せ」と啓示を受けとった後に、モーゼが神にうったえているセリフです。

ミュージカル曲『Bargain(安売り)』
(『レミゼラブル』より)

I found her wandering in the wood
This little child,
I found her trembling in the shadows
And I am here to help Cosette
I will settle any debt
you may think proper
I will pay what I must pay
To take Cosette away.
“I love you”
There is a duty I must heed,
There is a promise I have made

森の中でこの子を見つけたんです
こんな小さい子が
暗がりで怯えていました
それでこのコゼットを助けて連れてきたんです
借金はすべて返済します
納得する額を言ってください
払うべきものは払います
このコゼットを連れて帰れるためなら
「愛してるよ」
どうしても果たさなくてはならない義務があります
どうしても守らなくてはならない約束があります

下の動画の0:55からの部分

以下は pay attention to の用例。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』より
Sam : What were you doing in the middle of the street, a kid your age?
Stella : Don’t pay any attention to him. He’s in one of his moods

サム「(マーティに)いい歳して、道の真ん中で何やってたんだよ?」
ステラ「(マーティに)気にしないで。この人、機嫌が悪いのよ」

上のセリフは、車の前に飛び出してきたマーティに、車を運転していたサム(マーティの未来のお母さんのお父さん)が怒っていて、それをステラ(マーティの未来のお母さんのお母さん)が「気にしないで、夫は機嫌が悪いだけだから」とフォローしているセリフです。

映画『アナと雪の女王』より
Kristoff : Hang on. You mean to tell me you got engaged to someone you just met that day!?
Anna : Yes. Pay attention. But the thing is, she wore the gloves all the time, so I just thought, maybe she has a thing about dirt.

クリストフ「ちょっと待て。お前、その日に初めてあったばかりの男と婚約したっていうのか!?」
アナ「そう。聞いて。だからね、エルザったらいつも手袋しっぱなしで、まあちょっと潔癖なのかな、くらいに思ってたんだけどさ」

上のセリフは、アナが話している最中にクリストフが割ってしゃべってきたので、「ちゃんと聞いて」と言っているセリフです。

次はヒッチコックの映画から。

映画『裏窓』より
LISA : How far does a girl have to go before you’ll notice her?
JEFF : Well, if she’s pretty enough, she doesn’t have to go anywhere. She just has to ‘be.’
LISA : Well, ain’t l? Pay attention to me.
JEFF : I’m not exactly on the other side of the room.
LISA : Your mind is… and when I want a man, I want all of him.

リザ「あなたの気をひくには、どこまで遠くに離れたらいいの?」
ジェフ「いやいや、魅力的な子なら、どこにも行く必要ないさ。ただそこにいてくれるだけで」
リザ「あら、わたしはどうなの? もっと気にかけてよ
ジェフ「僕は向かいの部屋にいるわけじゃないだろう」
リザ「心はそうじゃない……だってわたし、好きになると、その人のすべてがほしくなっちゃうの」

ヒッチコック節が効いてて、とてもウィットに富んだ素敵な会話ですね。
主人公のジェフは望遠レンズで隣のアパートの覗きにハマってて、恋人のリザは「あなたに注目してもらうためには遠くに行かないといけないのかしら」と皮肉を言っているんですね。
この場合の Pay attention to me は「覗きばかりやってないで、わたしのことももっと見て」ということですね。

用例を3つづつ挙げましたが、heed は「気に留めて、それを踏まえて何かをする」というニュアンスで、pay attention to は「気に留める」行為そのものに焦点があてられている、ということがおわかりいただけたかと思います。

あと、heed を使った熟語で、pay heed to というのもあります。

pay heed to = 〜に注意する、〜を心に留める

この場合は、ほとんど pay attention to と意味は同じだそうです。
ただ使われる頻度がかなり少ないので、自分で使う場合はすべて pay attention to で代用しても問題はなさそうです。
リスニング用に頭にとどめておきましょう。

映画での用例も探してみたのですが、『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』という映画の挿入歌『Hoist the colors(旗を上げろ)』の歌詞にあったくらいでした。

Hoist the colors(旗を上げろ)
『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』より

Pay heed the squall,
And turn your sail toward home!

スコールに気をつけろ
そして我が家に向かって舵を切れ!

※2:27からの部分

この場合はむしろ be careful of に近い意味合いという感じがしますね。

その他の注目ボキャブラリー

earn distinction = 功を立てる、成功する

earn = 得る、獲得する

distinction = 区別、差異
「栄誉」「名声」などの意味で使われます。

stroke of good fortune = 思いがけぬ幸運

stroke = 一撃

King George = ジョージ国王
ずっと後のシーンでジョージ3世が出てきますが、この時はまだその先代のジョージ2世のことかもしれませんね。
レドモンドが参戦することになる7年戦争(1756〜1763年)は、最初の4年間がジョージ2世(在位1727〜1760年)の時代で、後半3年間がジョージ3世(在位1760〜1800年)です。

in want of = 〜を必要として、〜が欠けて

whence = from when = どこから
上記のように、whence は from が内部に含まれた言葉なので、本当は from whence という言い方は文法的に誤りだとする意見もあるようですが、今回の用例のように、実際には from whence の形でもよく使われているようです。
文語なので普通の英会話では使われません。

あとがきにかえて

今回で『バリー・リンドン』で英語の勉強も7回目になりました。
まだ映画全体の尺にして五分の一くらいのところですね。
長い映画です。

もともと『バリー・リンドン』はスタンリー・キューブリック監督の映画でいちばん長い映画だったのですが、1991年に『スパルタカス』のカットされたシーンを戻した復元版がリリースされて、2番に下がりました。

バリー・リンドン…185分
スパルタカス…184分
スパルタカス復元版…193分

これだけ長い映画なのに、私は何度見ても少しも飽きることなく最後まで見れます。
本当によく出来た傑作だと思います。

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