「怒らせる」を英語で?【バリー・リンドン】

本日は映画『バリー・リンドン』のセリフから、「怒らせる」を意味する英単語を勉強してみます。

ピックアップしたセリフはイギリス軍での食事シーン。

スープのカップに油がこびりついていたレドモンド。

新しいカップと替えてくれ。こいつは油だらけだ
(Can I have a new beaker? This one is full of grease)

と文句を言います。

すると、周囲から笑いがおこり、無頼漢のトゥールが

この紳士にタオルとウミガメのスープが入った洗面器を渡してやれ
(Give the gentleman a towel and a basin of turtle soup)

と嫌味を言いだします。

軍隊なんてのはならず者の集団ですから、たかが油がついてるだけで「カップを変えてくれ」なんてお行儀のいいこと言ってるレドモンドはすぐバカにされるんですね。

そこでレドモンドの横に座っている男が小声で囁くセリフがこちら。
映画本編では始まって36分40秒のところです。

If you want to vex him, ask him about his wife, the washerwoman who beats him.
(奴を怒らせたかったら、いつも奴をいじめてる洗濯女の奥さんのことを聞いてやれ)

きっとこの男はトゥールが嫌いなのか、過去にいじめられた経験でもあるんでしょうね。




「怒らせる」を意味する英単語いろいろ

本日の注目の単語はこちら。

vex = 怒らせる、苛立たせる、うるさがらせる

vex って、あまり見ない言葉ですよね。

「怒らせる」を意味する英単語は、他にもたくさんあります。
めぼしいものではこれらがありますね。

annoy = うるさがらせる、苛立たせる、怒らせる
bother = 悩ます、うるさがらせる、迷惑をかける
irritate = イライラさせる、怒らせる、じらす

ただ「怒らせる」とは言っても、実際に日本語に訳す場合は別の言葉を使ったほうが適切なケースが多いんですが、とりあえずこのページでは便宜的に類義語としてまとめて扱いたいと思います。

というのも、英英辞典で vex をひくと、annoy、bother、irritate などの言葉がその意味として出てくるんですね。

やはりこの中では vex が圧倒的に使われる頻度が低いです。
ただ、それでもちょくちょく使われているのを聞きます。

最近の映画ではこんな vex の用例がありました。
(ついでに irritate も使われていますね)

映画『スーサイド・スクワッド』より
RICK FLAG : You disobey me, you die. You try to escape, you die. You otherwise irritate or vex me, and guess what? You die.
HARLEY QUINN : I’m known to be quite vexing. I’m just forewarning you.
RICK FLAG : Lady, shut up!

リック・フラッグ「命令に背いたら殺す。逃げたら殺す。それから俺をイライラさせたり怒らせたりしたら、そのときは? ……殺す」
ハーレイ・クイン「あたし、人を怒らせることで有名なんだ。前もって言っとくけど」
リック・フラッグ「女、黙れ!」

下の動画の0:06からの部分。

さて vex と、先にあげた他の「怒らせる」を意味する言葉は、どう違うのでしょうか?

調べてみたところ、vex は annoy や bother より強い表現だそうです。

つまり、大雑把に言うと

annoy や bother は「ムカつく」で
vex は「めっちゃムカつく」

みたいな感じですね。

怒らせる程度で言うと、irritate はほとんど同じように使えますが、vex の方が irritate や bother や annoy より「混乱の度合いが高い」と言っているネイティブの人がいました。

ちょっと他の映画から vex 以外の3つの用例をあげてみます。

映画『怪盗グルーの月泥棒』より
GRU : Okay, rule number two. You will not bother me while I’m working. Rule number three. You will not cry or whine or laugh or giggle or sneeze or burp or fart! So, no, no, no annoying sounds. All right?
AGNES : Does this count as annoying?
GRU : Very!

グルー「よし、ルールその2。俺の仕事中に邪魔するな。ルールその3。ギャーギャーピーピー泣いたり、ゲラゲラくすくす笑ったり、くしゃみしたりゲップしたりオナラしたりしない! つまり煩わしい音はいっさいナシ! わかったか?」
アグネス「これは煩わしい音に入る?(ほっぺたを鳴らす)」
グルー「かなり!」

下の動画の2:10からの部分。

上の用例みたいに、bother はただ「邪魔する」程度に解釈したほうが自然なことが多いですね。

映画『セックスと嘘とビデオテープ』より
ANN : Why do you have to say that?
CYNYHIA : Say what?
ANN : You know what. You say it just to irritate me.

アン「なんでそんなこと言うの?」
シンシア「そんなことって?」
アン「あのさ。そんなこと言うなんて、わたしをただイヤな気持ちにさせるだけじゃないの」

こうして用例ををみてみると、irritate や bother や annoy はまだ冷静な印象がありますよね。
訳す場合も、「怒らせる」よりは、「イライラさせる」「苛立たせる」「邪魔する」くらいに解釈したほうが自然な場合が多いです。

対して vex は、「もうどうしてくれよう」みたいな感覚の「怒らせる」を表現している印象がありますね。

日常生活でカジュアルに使うなら、irritate や bother や annoy で、特に気持ちの収まりがつかないような「ムカつく」感情を表現したい場合は vex を使うといいかもしれません。

あとがきにかえて

本日は映画『バリー・リンドン』から、vex をはじめ、いろんな「怒らせる」を意味する単語をご紹介しました。

本題とは関係ありませんが、本日とりあげた『バリー・リンドン』のセリフの後、レドモンドはトゥールに奥さんのことを質問し、激怒させることに成功。
そしてボクシングの試合へと発展し、見事レドモンドはトゥールをコテンパンにやっつけちゃうんですね。

全体的に淡々とした『バリー・リンドン』のなかでも数少ないアクションシーンのひとつです。

そして、ここで行われる戦いは現在のボクシングの試合の原点だと言えますね。

ただ、倒れた選手をみんなで起こして無理やり試合に復帰させる様は、プロレスのランバージャックデスマッチを思わせます。

wikipediaによるとプロレスのランバージャックデスマッチはカナダの木こりが起源だそうですが、

Lumberjack = 木こり

この『バリー・リンドン』を見ると、わりとあちこちで似たような形式で試合が行われていたのがわかりますね。

カンガルーとボクシング

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