「あゝ悲しい哉」を英語で?【バリー・リンドン】

 映画『バリー・リンドン』は文芸大作ですが、とりわけナレーションに文学的な表現が多くみられます。

 本日はそんなナレーションから、文学的な、でも、わりとあちこちで目にする表現をひとつご紹介します。

 引用するのは上の動画では2:46から、
 映画本編では始まって1時間30分8秒のところです。

They always played on credit with any person of honour or noble lineage. They never pressed for their winnings or declined to receive promissory note in lieu of gold. But woe to the man who did not pay when the note became due. Redmond Barry was sure to wait upon him with his bill.

彼らは相手がどんな紳士や名門であっても、ツケで賭けさせた。勝ち金を無理に催促することもなく、現金が無ければ寛容にも借用書で済ませてやった。しかし期限までに支払わなかった者は悲しい哉。レドモンド・バリーが必ず請求書を持って待ち受けていたのである。




woe to 〜

本日ピックアップしたのはこちらの1節。

woe to the man who did not pay when the note became due
(期限までに支払わなかった者は悲しい哉

woe = 悲痛、苦悩、悲哀、災難

英語には、この woe という単語を使ったいくつかの文学的な成句があります。

woe to 〜、Woe betide 〜

この woe という単語の後に前置詞の to または betide(起こる、生じる)という動詞を伴って、以下のような成句になります。

woe to 〜、Woe betide 〜 = 〜は悲しい哉、〜に災いあれ

聖書なんかによく出てくる言い回しですね。

映画『十戒』より
Woe unto thee, O Israel. You have sinned a great sin in the sight of God.
(イスラエルの民よ、汝らに災あれ。汝らは神の目の前で大罪を犯した)

上の用例は前置詞が to じゃなくて unto になっていますね。
unto は to の古い形だそうです。

近代を舞台にした映画からも用例をひとつ。

映画『オズの魔法使い』より
Curses! Curses! Somebody always helps that girl! But shoes or no shoes, I’m still great enough to conquer her, and woe to those who try to stop me!
(畜生! 畜生! いつも誰かがあの小娘に手を貸しやがる! しかし靴があろうとなかろうと、あんな小娘、この手でひねり潰してやるわ、わたしを邪魔する者に災あれ!)

Woe betide のほうの用例もひとつ挙げておきます。

映画『ケイン号の叛乱』より
If I see another shirt-tail flapping, while I’m captain of the ship, woe betide the sailor, woe betide the OOD and woe betide the Morale Officer.
(もし誰かのシャツがまたズボンから出ていたら、俺が船長である限り、水兵だろうが当直士官だろうが指導員だろうが容赦しないからな

Woe is me!

さて、この woe という言葉、次の成句でもよく使われます。

Woe is me! = ああ悲しい哉、ああ災なる哉

映画『ロッキー・ホラー・ショー』より
Oh, woe is me!
My life is a misery
Oh, can ‘t you see
That I’m at the start
Of a pretty big downer

ああ、悲惨だな!
ボクの人生は惨めだ
ああ、わかるかい
ボクは今まさに
どん底に転落しようとしている

この Woe is me! は、80年代の稲川淳二の流行語「悲惨だなぁー!」の英語訳にもピッタリかもしれませんね。

woe is me!

一般的な用例

この woe(悲痛、苦悩、悲哀、災難)という単語、普通に名詞として、映画の会話でもよく使われます。

映画『ショーシャンクの空に』より
It’s obvious this fellow Williams is impressed with you. He hears your tale of woe and naturally wants to cheer you up.
(このウイリアムって野郎は、お前に心を動かされたんだよ。お前の悲惨な身の上話しを聞いて、思わず元気付けたくなったのさ)

映画『未来は今』より
HUDSUCKER : Imbecile. Failure to deliver a blue letter is grounds for dismissal
NORVILLE : Jeez, sir. I …
HUDSUCKER : Oh. It’s new year. I’m not going to add to your woes. I’m just saying.

ハッドサッカー『バカ者。ブルー・レターの届けミスは免職ものだぞ』
ノーヴィル『しまった、あのう……僕……』
ハッドサッカー『まっ、新年だしな。お前の災難をこれ以上増やすつもりはない。ちょっと言ってみただけだ』

あれ、今、気が付いたんですが、上に引用したふたつの映画、両方ともティム・ロビンス主演ですね。
しかも公開が同じ年で、どちらの woe も彼が演じる人物の身の上を指しています。
こういうのもシンクロニシティっていうんでしょうか。

その他の注目ボキャブラリー

on credit = ツケで、売り掛で、クレジットで

noble lineage = 名門の

press for = 〜を強く求める

decline = 減少する、断る、傾く

in lieu of = 〜の代わりに
フランス語の au lieu de が語源

be sure to = 必ず

あとがき

本日は日本語でも文学などでよく目にする表現「ああ、悲しい哉」「〜に災あれ」の英語表現 woe という単語をご紹介しました。

シェークスピアなどにもよく出てくるので、英語で映画や文学を嗜みたい方には必須のボキャブラリーだと言えますね。

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