「〜で通用する」を英語で?【イングロリアス・バスターズ】

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イングロリアス・バスターズ

本日からクエンティン・タランティーノ脚本・監督の映画『イングロリアス・バスターズ(Inglourious Basterds)』でも英語の勉強をしていこうと思います。

“タランティーノの映画が一番、英語の勉強になる”

と、私は確信していますが、この『イングロリアス・バスターズ』もドイツ語・フランス語・イタリア語が入り乱れる映画ながら、きっちり英語の部分だけでも素晴らしい学力向上の泉となっております。

(ちなみに私がタランティーノの映画を英語の勉強におすすめする理由は、前回の記事「英語の勉強にタランティーノの映画をおすすめするこれだけの理由」をお読みください)

本日とりあげるのは、冒頭の名シーンから。

映画がはじまって7分半くらいのこの部分。

フランスの片田舎、酪農業を営むラパディット家に、ある日突然、不気味なナチスの部隊がやってくる。

そのナチスのハンス・ランダ大佐とラパディット主人との会話。

Landa : While I’m very familiar with you and your family, I have no way of knowing if you are familiar with who I am. Are you aware of my existence?
LaPadite : Yes.
Landa : This is good. Now, are you aware of the job I’ve been ordered to carry out in France?
LaPadite : Yes.
Landa : Please tell me what you’ve heard.
LaPadite : I’ve heard that the Führer has put you in charge of rounding up the Jews left in France who are either hiding or passing for Gentile.
Landa : The Führer couldn’t have said it better himself.

ランダ「私は貴方のことも、貴方の家族のことも、よく知っている。しかし、貴方が私のことを知っているのかどうか、それは分からない。さて、貴方は私が何者か、ご存知かね?」
ラパディット「はい」
ランダ「それは結構。では私がフランスに配備され、実施している任務はご存知かね?」
ラパディット「はい」
ランダ「さあ、言ってくれ、どう聞いてる?」
ラパディット「なんでも貴方は、フランスでまだどこかに隠れてる、もしくは一般人に紛れているユダヤ人たちを、一掃するよう総統に命じられたとか」
ランダ「総統ご自身が言うよりも正確な答えだ」




目次

pass for について

この会話で注目したのは、ラパディットのセリフにある passing for Gentile というフレーズ。

pass for 〜 = 〜として通る、〜で通用する

この pass for とは、「本当は◯◯なんだけど、まわりには△△だと見られている」みたいな状況でよく使われる言葉です。

例えば本当は30歳なんだけど、若作りでテレビでは20代で通ってる女性芸能人とか。
そういうのは、

She is passing for twenties.

などと言うんですね。

そういえば私が昔アメリカに住んでいたとき、日本人の友だちが韓国人と間違われて、おもしろいのでそのまま韓国人のふりしてずっと過ごしていたやつがいましたけど、ああいうのを

He is passing for Korean.

というんですね。

様々な人種や宗教や階級が混在しているアメリカのような国では、こういう表現はわりと重要ですね。

人種の話題で pass for というと、タランティーノも大好きなダグラス・サーク監督の『悲しみは空の彼方に(Imitation of Life)』という映画を思い出します。

白人の父と黒人の母との間に生まれた女の子がいて、どちらかというと白人に近い顔をしているので、学校では白人に見られているんですね。
ところがある日、母親が学校に忘れ物を届けにきて、母親をクラスメートに見られてしまい、「お前の母親は黒人じゃないか。お前は黒人だったのか」と蔑まれ、差別を受けるようになってしまうんです。
それからその女の子は、自分の母親が黒人であることに引け目を感じ、就職しても恋人ができても、母親が黒人であることを必死に隠そうとするようになってしまう。
その女の子の人種は本当はどちらだとか、そういうのは関係なく、こういう場合も

she tries to pass for white

って言い表すんですね。

他の映画での pass for の用例では、ジェームス・キャメロン監督の映画でよくこの言葉を見ますね。

例えば以下は、『ターミネーター2』で、アーノルド・シュワルツネッガー演ずる味方のターミネーターが、悪役のターミネーター・T-1000との激しい攻防でおびただしい数の銃弾を受け、それを修理しているシーン。
サラ・コナーはその銃創を見て

Sarah : Will these heal up?
Terminator : Yes.
Sarah : Good. If you can’t pass for human, you’re not much good to us.

サラ「それ、完全に治るの?」
ターミネーター「はい」
サラ「よかった。ちゃんと人間で通ってくれないと、わたしたちにとっても都合悪いからね」

また、下は映画『タイタニック』で、デカプリオ演ずる主人公が、紳士の服装を着てパーティーに現れるシーンで、それを見たヒロイン、ローズの婚約者が言うセリフ。

Well, it’s amazing. You could almost pass for a gentleman.
(これは驚いた。ほとんど紳士で通るよ

「ロボットが人間で通る」とか、「下級層の若者が紳士で通る」とか、いろんな使い方ができるのがわかりますね。

『イングロリアス・バスターズ』のこのシーンでは、pass for は

passing for Gentile

というフレーズで出てきます。

Gentile = 非ユダヤ人

Gentile とは、辞書で調べると「ユダヤ人からみたユダヤ人以外の人」と出てきますが、このシーンではちょっとざっくりと「非ユダヤ人」という意味で使われています。

つまり「フランス人などに紛れて何食わぬ顔して生きているユダヤ人」、いわゆる後のシーンでエマニュエル・ミミューと名乗ってフランス人として生きているショシャナ・ドレイファスのような人を指してるんですね。

その他の主なボキャブラリー

be familiar with 〜 = 〜に精通している

have no way of 〜 = 〜するすべがない

carry out 〜 = 〜を実施する、遂行する

put someone in charge of 〜 = (人)に〜の管理を任せる

round up = (家畜など)を刈り集める、一斉に検挙する

まとめ

本日は『イングロリアス・バスターズ』の短い会話から、pass for というボキャブラリーを中心に、英語の勉強をしてみました。

この冒頭のシーンはまだまだ勉強になりそうなボキャブラリーがたくさん出てきますので、何回かに分けてこのブログで取り上げていこうと思います。

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