ドイツ系バスターズの紹介でみつけたレアな英語表現【イングロリアス・バスターズ】

イングロリアス・バスターズの看板

『イングロリアス・バスターズ』は群像劇ですが

ストーリーの中核を担うのが秘密部隊“バスターズ”のメンバーたち

おもにユダヤ系アメリカ人ばかりで構成された彼らですが

このなかにドイツ系のメンバーが2名います。

映画の序盤でアルド・レイン中尉がこの2名のドイツ系バスターズを紹介する場面で、おもしろい英語の表現がいくつかあるんですね。

以下がそのレイン中尉のセリフの引用。
映画本編がはじまって27分50秒のところです。

Wicki here, an Austrian-Jew, got the fuck out of Munich while the getting was good. Became American, got drafted, come back to give you all what for.
(このヴィッキは、オーストリアのユダ公でな、状況が悪くなる前にミュンヘンをズラかって、アメリカ人になって、徴兵されてよ、オメーらにゲンコツ喰らわせるために戻ってきたんだ)

タランティーノらしく、この短い文にレアな表現が2つもあります。




get out while the getting is good という表現について

まず最初の got the fuck out of Munich while the getting was good(状況が悪くなる前にミュンヘンからトンズラこいた)という一節。

get out while the getting is good

これで

状況が悪くならないうちに逃げる

という意味の決まった言い方です。

とくに

the getting was good = 状況が良好

というのがかなり変わった言い回しですね。

the getting は文字どおりに理解するなら「獲得すること」ということで、「実入りが安定している平時の状況」といったニュアンスになるんですね。

他の映画で用例を探してみたところ、『雨に唄えば』のスタンリー・ドーネンが監督した1975年のミュージカル映画『ラッキー・レディ』で「While the Getting is Good」という曲をライザ・ミネリが歌っていました。

この曲です

これで「他の映画でも用例があったぞ」と早合点してはいけません。

映画オタクで引用好きなタランティーノのことですから、このセリフ自体がまさにこの『ラッキー・レディ』から引用した可能性もあります。

現に、後のシーンで「Paris When It Sizzles(パリで一緒に)」なんて、オードリー・ヘプバーンの映画のタイトルがそのままキャラクターのセリフに出てくる場面もあるくらいですから。

どちらにしろ、かなりレアな表現であることは確かなようです。

give someone what for という表現について

次のレアな表現が to give you all what for という一節。

この

give someone what for

の構文で

〜に大目玉(げんこつ)を喰らわせる

という決まった言い方なんですね。

what for というと、

What for? = なんのために?

というシンプルな疑問文がすぐに思い浮かびますが、これとは違って、この一節に出てくる what は関係代名詞としての用法なんですね。

噛み砕いて訳すと what for で「お前がやったことに対する報い」のような意味でしょうか。

これもかなりレアな表現で、私の知る限り、映画でこの用例はここだけです。

いちおう辞書で見つけた例文を引用しておきます。

You’ll get what for from Mom if she catches you smoking.
タバコ吸ってるところ見られたら、お母さんに大目玉喰らうよ。

make an example of という表現について

レアな表現ばかりではあれなので、最後に比較的よく使われる表現をひとつ。

この後の場面で、サミュエル・L・ジャクソン(Samuel L. Jackson)のナレーションが入り、もうひとりのドイツ人バスターズ、ヒューゴ・スティーグリッツ(Hugo Stiglitz)が紹介されます。

そこの部分の引用。
映画がはじまって28分25秒くらいのところです。

As a German-enlisted man, he killed 13 Gestapo officers. Instead of putting him up against a wall, the High Command decided to send him back to Berlin to be made an example of.
(ドイツ軍の下士官の身で、彼は13人ものゲシュタポの将校を殺害。司令部は彼を銃殺刑に処す代わりに、見せしめにさらなる重罰を与えるため、ベルリンへと護送することにした)

ここに出てくる to be made an example of という表現。

make an example of

で、

〜の見せしめにする、槍玉に挙げる(そして、さらに重い罰を下す)

という意味になります。

example は「例」という意味で知られる単語ですが、an という冠詞がついて「ひとつの例」となり、make an example of で「〜の見せしめにする」となるんですね。

これはニュースなどを聴いてると割とたまに出てくる表現ですから、自分からは使う機会はあまりなくても、英語のリスニングには覚えておいた方がいい熟語です。

他の映画からも用例を上げておきます。

映画『父親たちの星条旗』より
Hank : Don’t worry, lggy. They never shoot at the first patrol.
lggy : They don’t?
Hank : No. They want us to go up to the top, signal to the others that it’s okay, then shoot everybody else as they come up the mountain.
lggy : Really?
Hank : Yeah. Unless, of course, they want to make an example of us and discourage all the others.

ハンク「心配するな、イギー。奴らは最初の斥候から撃ってきたりはしないよ」
イギー「しない?」
ハンク「しないしない。奴らは俺らが山頂に登って、本隊に合図をするところまでは構わないんだ。本隊が山頂に合流してから、初めて撃ってくるつもりなのさ」
イギー「本当か?」
ハンク「ああ。もちろん奴らが俺たちを見せしめに銃撃して、他の兵の士気を削ぐつもりでもない限りはな」

おわりに

今日はドイツ系バスターズを紹介するセリフ、およびナレーションから、レアな表現2つ、よく使われる表現をひとつ、とりあげてみました。

しかしバスターズのメンバーって、8人もいるのに、隊長のレイン中尉以外はあまり個性が立っていないところがちょっと物足りない感があるんですよね。

『パルプ・フィクション』のウルフやエズメラルダみたいに、そのシーンにしか出ないのに、強烈な個性をちらつかせて消えてゆくキャラクターが他のタランティーノ映画にはたくさんいるのに、こればかりは不思議です。

ひょっとしたらタランティーノ得意のリアリティ演出の一環で、秘密部隊らしく目立たない人ばかりを選んだんでしょうか。

というわけで、次の『イングロリアス・バスターズ』の回もアルド・レイン先生にご登壇いただきます。

 * * *

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