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アポリネールの『ミラボー橋』を和訳してみた

ミラボー橋


ミラボー橋

ミラボー橋のした流れるセーヌ川
とわれらの恋
思い出す
苦しみのあとにはいつも喜びが

夜は更け鐘は鳴る
日々は過ぎ去り私は残る

手と手をとりあい見つめ合おう
ちょうどわれらの
手の橋の下に波うつ
その疲れた永遠のまなざし

夜は更け鐘は鳴る
日々は過ぎ去り私は残る

この流れる水のように恋は去り
恋は去り
だらだらと続く人生のようで
おさえきれない希望のようで

夜は更け鐘は鳴る
日々は過ぎ去り私は残る

日々は流れ、月日は流れ
流れさった時も
恋も戻らない
ミラボー橋のした流れるセーヌ川

夜は更け鐘は鳴る
日々は過ぎ去り私は残る

Le pont Mirabeau

Sous le pont Mirabeau coule la Seine
Et nos amours
Faut-il qu’il m’en souvienne
La joie venait toujours après la peine

Vienne la nuit sonne l’heure
Les jours s’en vont je demeure

Les mains dans les mains restons face à face
Tandis que sous
Le pont de nos bras passe
Des éternels regards l’onde si lasse

Vienne la nuit sonne l’heure
Les jours s’en vont je demeure

L’amour s’en va comme cette eau courante
L’amour s’en va
Comme la vie est lente
Et comme l’Espérance est violente

Vienne la nuit sonne l’heure
Les jours s’en vont je demeure

Passent les jours et passent les semaines
Ni temps passé
Ni les amours reviennent
Sous le pont Mirabeau coule la Seine

Vienne la nuit sonne l’heure
Les jours s’en vont je demeure

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アポリネールの『ミラボー橋』:翻訳について雑談

アポリネールの詩集『アルコール』をフランス語の原書で読んでいて、ふと『ミラボー橋』を「自分なり」に訳してみたい欲求にかられ、やってみました。

名訳が数多くありますが、私はとくに言葉のリズムを意識して訳してみました。

リズムにこだわるあまり、原文では文章になっているところを体言止めで訳してしまった部分がいくつかあります。

例)
セーヌ川が流れる

流れるセーヌ川

西洋の文章を訳す場合、日本語はどうしてもだらだらしがちな言語ですが、開きなおって体言止めを使うとスッキリすることが多いですね。

こういう構造に逃げるところが私の実力の限界といったところですので、ご容赦ください。
しかしまあ、詩は言葉の音楽なので、感覚的に訳した方が元のニュアンスに近くなるということもあるかも……しれません。

あと、アポリネールの原文は句読点や終止符の類が一切なしで書かれていますので、私もそれにならってテンもマルも使いませんでした。

それから例えば

Faut-il qu’il m’en souvienne

みたいな文章。
もし正確に訳すなら Faut-il que が入っているので「思い出さざるを得ないのだろうか」となると思いますが、私はここもスッキリと

思い出す

のひと言で訳しました。

私は常々、日本語は「そこまで言わなくても空気を読めばわかるでしょ的な言語」だと思っています。
なので、これだけでも文脈で「ミラボー橋にくると嫌が上にもあの思い出がよみがえってきてしまう」という意味は伝わりますよね。

西洋の言葉は短いフレーズで細かいニュアンスが表現できてしまうので、詩などはとくにこういう付属要素はどんどん省略していくと日本語の美しさがひきたつように思います。

堀口大學先生の名訳にはほど遠いですが、これはこれで楽しんでいただけたら幸いです。

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