「それなら話しは別だ」「あの時は楽しかった」を英語で?【イングロリアス・バスターズ】

本日ピックアップしたのはタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』のこちらのシーン。

ちなみに、これまでの流れを想起してみますと、

スパイとの密会の場で運悪くドイツ兵と居合わせ、銃撃戦に発展。

ドイツ語がしゃべれる隊員は全員死亡。

唯一生き残ったブリジットは足を撃たれ、歩行困難。
映画のプレミア上映会に出席するどころではなくなりました。

作戦は中止かと思われましたが、プレミア上映会にヒトラーが出席すると聞いて、アルド中尉の態度が変わります。

そこでの会話。

上の動画では1:26のところ。
映画本編では1時間41分57秒くらいのところです。

BRIDGET : What are you thinking?
LT. ALDO : I’m thinking getting a whack at planting old Uncle Adolf makes this horse a different color.
BRIDGET : What is that supposed to mean?
LT. ALDO : It means you getting us in that premiere.
BRIDGET : I’m probably going to end up losing this leg. Bye-bye, acting career. Fun while it lasted. How do you expect me to walk the red carpet?
LT. ALDO : Doggy doc’s going to dig that slug out your gam. He’s going to wrap it up in a cast, and you got a good how-l-broke-my-leg-mountain-climbing story. That’s German, ain’t it? You all like climbing mountains, don’t you?
BRIDGET : I don’t. I like smoking, drinking and ordering in restaurants. But I see your point.
LT. ALDO : We fill you up with morphine till it’s coming out your ears and just limp your little ass up that rouge carpet.

ブリジット「どうするつもり?」
アルド中尉「アドルフおじさんが一枚噛むってことになりゃあ、話しは違ってくらあ」
ブリジット「どういう意味よ?」
アルド中尉「オレたちをプレミアに連れてけってこった」
ブリジット「多分わたしのこの脚はもう治らない。さよなら女優生命。もう戻らない輝かしい日々よ。って、こんな状態でレッドカーペットを歩けっての?」
アルド中尉「犬医者におみ足の弾、掘り出してもらってよ、ギブスで固めて、手ごろな“山登りで足折った”話しをデッチ上げんだ。ドイツ人らしいだろ? オメーらみんな山登り好きだべ?」
ブリジット「わたしは別に。わたしはタバコ吸って、お酒飲みながら、レストランで注文してる方が性に合ってるけど。まあ、でも言いたいことはわかるわ」
アルド中尉「耳からはみ出るくらいモルヒネ打ちまくってよ、その足でレッドカーペット引きずって歩くんだ」

ここの会話、英語の発音はかなり難しいですが、タランティーノらしく、凝った英語表現が集中していて、勉強になりますね。




「試しにやってみる」「それなら話しは別だ」

まずはこちらの1行。

I’m thinking getting a whack at planting old Uncle Adolf makes this horse a different color
(アドルフおじさんに一発かますことができるってことなら、話しは別だ

つまり、ヒトラーがこの作戦のターゲットに加わったのなら、話は別だ、無理にでも決行しよう、と言っているセリフだと思います。

成功したら一晩で戦争が集結するかもしれないわけですから、そう考えるのも当然ですね。

ちなみにDVDの字幕では「アドルフの野郎に一発かまし戦局を変える」となっています。

ちょっと私の解釈と違いますが、どちらが正解なんでしょうね。

さて、ここに2つ、おもしろい英語の熟語があります。

have a whack at

まずはこちらの表現。

have a whack at = 〜を試みる、試しにやってみる

シーンでは have が get になっていますが、英熟語の have を get に置き換えて言うのは映画でよくあることです。

この have a whack at という表現、have a try at(〜を試みる、試しにやってみる)と、ほぼ同じ意味なんですね。

ちなみに whack は、こういう意味の単語です。

whack = (棒などで)ぴしゃりと打つ

なんとなく、

give it a shot = 挑戦してみる

という表現と似ていますね。

give it a shot は、よく聞きますが、have a whack at は、ほとんど聞いたことがないので、かなりマイナーな表現だと言えます。

全体の解釈ですが、plant は木などの植物を「植える」という意味ですが、「罠を仕掛ける」という意味もあるので、

getting a whack at planting old Uncle Adolf

で、

「一か八かアドルフおじさんをハメることができるなら」

みたいな感じの意味になりますね。

a horse of a different color

次は「makes this horse a different color」の部分ですが、これは以下のような英語の熟語表現があるんですね。

a horse of a different color = まったく別の話し

いわゆる、これの変則的な使い方だと言えます。

この表現が使われた映画の有名なシーンというと、即座にこれが思い出されますね。

映画『オズの魔法使い』より
Why didn’t you say that in the first place? That’s a horse of a different color! Come on in!
(なんで最初にそれ言わないの? それなら話しは別だよ! 入りなさい!)

上のセリフは、オズの魔法使いに会いにきたドロシーが、門番にけんもほろろに門前払いを食らわされ、「北の良い魔女に遣わされてきたのよ」と言い返すと、「それなら話しは別だ、入っていいよ」と言われるシーンのセリフです。
この後、門に入ると、そこに本当にカラフルな色をした馬がいる、というオチでしたね。

こちらのシーンです(5:33からの部分)

この『オズの魔法使い』のシーンをご覧になってもおわかりの通り、a horse of a different color とは、文字通りには「違う毛色の馬」という意味ですね。

この表現は、もともとシェークスピアの『十二夜』に

My purpose is, indeed, a horse of that colour
(私が目指すのはまさに、あの毛色の馬だ)

というセリフがあったそうなんですね。ここから、

毛色が違えば、それはもうまったく別の話しになってしまう

という表現が派生したとのことです。

これにちょっと似た表現で

Don’t change horses in midstream
(流れの途中で馬を乗り換えるな)
意味:実行の途中で計画を変更するのは良くない

というのがあるそうです。

Fun while it lasted

ついでにこちらの慣用句もさらっとご紹介します。

(It was)fun while it lasted = あの頃は楽しかった

文字通りには

それが続いているうちは楽しかった
(今はもう終わってしまったのでその楽しみは失われた)

という意味ですが、これは後悔や悔いはないけど、もう二度と戻ってこない、楽しかった時を思い出してしみじみ言う決まり文句です。

この『イングロリアス・バスターズ』では、ちょっと自虐的な皮肉を込めて言っている感じですね。

その他の注目ボキャブラリー

end up = 〜する羽目になる

slug = ナメクジ、スラグ弾、ピストルの弾

gam = 女性のすらりとした脚
脚のきれいなアイドルユニットで「GAM」とゆうグループ名がありましたね。

wrap = 包む

cast = ギブス

I see your point = 理解しています

coming out of one’s ears = 多すぎる
「耳からはみ出るくらい」というところから、多すぎる、という意味になります。
アル・パチーノの『スカーフェイス』という映画で、「I got fucking octopus coming out of my ears(タコばかり食ってるぜ)」というセリフがありました。

limp = (足が不自由で)片足を引きずる、(故障などで)のろのろ進む

あとがき

このシーンのアルド中尉のセリフはかなり強烈な訛りで、英語を聴き取るのは難しいですね。
リスニングは上級レベルですが、こういうハードルの高いセリフで精聴をやると、リスニング力がずいぶん鍛えられる気がします。

もちろん、こんな英語ばかりを聴いてると自分が英語をしゃべるときにヘンな癖がついてしまってダメですが、いろんな映画で精聴をやる限りでは、プラス要素だと思います。

horses of different colors

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