「WARM… WARMER… DISCO!」この1行のセリフを解説【パルプ・フィクション】

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本日はタランティーノの映画『パルプ・フィクション』から、ヴィンセントとミアが初対面する直前の会話を英語の勉強として取り上げます。

ちょっとしたセリフのやりとりですが、面白い表現が3つもあります。

最後はちょっとしたトリビアもありますので、ぜひ最後まで読んでください。




目次

英文の引用と和訳:ミアがインターホン越しにヴィンセントに話しかけるシーン

まずは英語のセリフの引用をご一読ください。

上の貼った動画では0:55からの部分。
映画本編では始まってから32分のところです。

MIA : Vincent. … Vincent! I’m on the intercom.
VINCENT : Where is… Where is the intercom?
MIA : It’s on the wall by the two African fellows. To your right. … Warm… Warmer… Disco!
VINCENT : Hello?
MIA : Push the button if you want to talk.
VINCENT : Hello?
MIA : Go make yourself a drink, and I’ll be down in two shakes of a lamb’s tail. The bar’s by the fireplace.
VINCENT : Okay.

ミア「ヴィンセント……ヴィンセント! インターホンよ」
ヴィンセント「インターホン……どこだ?」
ミア「アフリカ人が2人いるでしょ、その近くの壁。向かって右……そうそう……そっちっち……そこ!」
ヴィンセント「もしもし?」
ミア「話す時はボタンを押して」
ヴィンセント「もしもし?」
ミア「ドリンクはご自由に。待ってて。すぐに降りていくわ。バーは暖炉の近く」
ヴィンセント「わかった」

Warm… Warmer… Disco!

Warm… Warmer… Disco!
(そうそう……そっちっち……そこ!)

Warm… Warmer

まずこちらの英文の解説。

warm…warmer

「warm」は「暖かい」という意味の形容詞

なので、文字通りには

「暖かい・・・さらに暖かくなってきた」

という意味になりますが、これだとわけが分かりませんよね。

「warm」の意味を英英辞典で調べると、最後の方にこんな意味の説明が載っています

warm
adjective, informal

(especially in children’s games) almost guessing a correct answer or discovering a hidden object

(主に子供が遊ぶゲームで)ほとんど正解、または、隠したモノを見つけかけた状態

出典:Cambridge Dictionary

例文としてこんな文章が掲載されています。

You’re getting warmer!
(惜しい! もう、ほとんど正解!)

出典:Cambridge Dictionary

つまり「warm」は「ほとんど正解」、「warmer」は「さらに正解に近づいた」という意味。

何かを探すゲームの場合、探しているモノが隠されている方向が「あったかい方」、逆の方向が「冷たい方」とイメージすれば理解しやすい表現だと思います。

disco

次に「disco」

意味は「そこよ」、つまり「正解」とか「当たり!」という意味で言ってるのは文脈でわかりますが、なんで「disco(ディスコ)」が「当たり!」という意味になるのか?

これはもともと英語にある表現ではなく、恐らくタランティーノがこの映画『パルプ・フィクション』で初めて使った表現です。

これはタランティーノの脚本にヒントがありました。

ちょっと後のシーンでミアがヴィンセントのコートのポケットからヘロインを見つけるシーンの部分。

『パルプ・フィクション』でミアがヘロインを見つけるシーン

このシーンです(出典:imdb

ここでミアは映画では「hello」と言っていますが、タランティーノの脚本ではここでもミアは「disco!」と言っています。

そこのト書きにこんなタランティーノの注釈があるんですね。

like you would say Bingo!
(「ビンゴ!」と言うみたいに)

つまり「ビンゴ!(当たり!)」というべきところで、似たような語感の「disco」を言うことでシャレた言葉遣いをしている、ということなわけです。

『パルプ・フィクション』は古き良き60年代の雰囲気を再現した映画ですから、あえて「ビンゴ」と言うべきところで「ディスコ」という言い回しをするところが『パルプ・フィクション』ならではのシャレた表現、というところでしょうか。

in two shakes of a lamb’s tail

これも面白い表現なのでついでにご紹介します。

I’ll be down in two shakes of a lamb’s tail.
(すぐに降りていくわ)

in two shakes of a lamb’s tail = すぐに

「in two shakes of a lamb’s tail」は、文字通りには「子羊がシッポを2ふりする間に」。

これで「すぐに」という比喩的な表現になるんですね。

『パルプ・フィクション』でジョン・トラボルタが演じているヴィンセント

出典:imdb

ディスコにまつわるトリビア

最後に余談ですが、前のシーンでランスがヴィンセントに

Coke is fuckin’ dead as … dead.
(コークなんてもう時代遅れさ)

というセリフがあります。

これはタランティーノの脚本ではこう書いてあるんですね。

Coke is fuckin’ dead as disco.
(コークなんてディスコ並みに時代遅れさ)

つまり映画本編のセリフでは「disco」が抜けているんですね。

これはランスを演じている俳優のエリック・ストルツが、セリフを噛んでしまったのをNGにせずにそのまま使っているんだそうです。

ここで注目したいのが、ヴィンセントの役を演じているのはジョン・トラボルタだということ。

ジョン・トラボルタと言えば、70年代に『サタデー・ナイト・フィーバー』と言うディスコ映画で一世を風靡した伝説の俳優です。

つまりエリック・ストルツは、トラボルタ相手に「ディスコは死んだ」などというセリフをしゃべるのが恐れ多くて、思わず言い淀んでしまったのだ、という説があるんだそうで。

タランティーノがこのテイクを本編に使ったのも、トラボルタに対するリスペクトの気持ちがあったからなのかもしれませんね。

ディスコにまつわるトリビアでした。