映画『塔の上のラプンツェル(Tangled)』のセリフや歌で英語の勉強をするシリーズ。
10回にわたってとりあげてきましたが、今回が最後です。
最後はやはりエンディングに流れるテーマ曲『Something That I Want(サムシング・ザット・アイ・ウォント)』の歌詞について。
今回はあまり難しい表現は出てきませんので、英語の勉強というよりも、歌詞の解釈についての解説がメインになります。
まずは英語の歌詞と私の和訳をざっとご一読ください。
Something That I Want
(サムシング・ザット・アイ・ウォント)She’s a girl with the best intentions
He’s a man of his own invention
She looked out the window
He walked out the door
But she followed him
And he said, “What’cha lookin’ for?”彼女は善意の女の子
彼は冒険好きな男の子
彼女は窓から外を眺め
彼はドアから飛び出した
しかし彼女は彼を追いかけた
そこで彼は言った「何を探してるの?」She said, “I want something that I want
Something that I tell myself I need
Something that I want
And I need everything I see彼女は言った「とにかくほしいものがあるの
なくてはならないと思っている何か
わたしがほしい何か
それは目に映るものすべて“Something that I want
Something that I tell myself I need
Something that I want
And I need everything I see”わたしがほしい何か
なくてはならないと思っている何か
わたしがほしい何か
それは目に映るものすべて」彼はずっと空想の世界に生きてきた
やがて彼女は自分なりに心を決めた
ちょうど言うべき言葉が頭に浮かんだとき
誰かがやってきて新しい手段を示してくれたShe said, “I want something that I want
Something that I tell myself I need
Something that I want
And I need everything I see彼女は言った「とにかくほしいものがあるの
なくてはならないと思っている何か
わたしがほしい何か
それは目に映るものすべて“Something that I want
Something that I tell myself I need
Something that I want
And I need everything”わたしがほしい何か
なくてはならないと思っている何か
わたしがほしい何か
そしてすべてが必要なの」だって
信じるだけならたやすいこと
あなたは夢の世界に生きているよう
自分が必要としている人が目の前にいるというのに
わからないの?Oh, I want something that I want
Something that I tell myself I need
Something that I want
And I need everything I seeああ、とにかくほしいものがあるの
なくてはならないと思っている何か
わたしがほしい何か
それは目に映るものすべてSomething that I want
Something that I tell myself I need
Something that I want
And I need everything I seeわたしがほしい何か
なくてはならないと思っている何か
わたしがほしい何か
それは目に映るものすべて
Something That I Want
まずはこの曲のタイトルについて。
直訳すると、「わたしのほしい何か」という意味ですね。
「わたし」とはもちろんラプンツェルのこと。
ラプンツェルが欲しがっているものについての歌だということがわかります。
best intentions
ここはラプンツェルのことを言っている一行。
She’s a girl with the best intentions.
(彼女は善意の女の子)
best intention = 善意
彼女はお人好しで心が優しく、騙されやすい、ということを best intentions というひと言で表しているのだと言えます。
ちなみにこの best intention の用例で最初に思い出す映画のセリフといえば、やっぱりこれでしょう。
映画『パルプ・フィクション』より
I just want you to know how sorry we are that things got so fucked up with us and Mr. Wallace. We got into this thing with the best intentions …
(ウォレスさんとの取り引きがこのようなことになってしまって、本当に申し訳ないと思っています。われわれはよかれと思ってやったことなんですが・・・)
best intention というのはこの用例のように、何かまずいことが起きたときに、「よかれと思ってやったんです(悪気はありませんでした)」と言い訳するときによく使われますので、覚えておくと英会話に使えるかもしれません。
one’s own invention
一方、こちらはライダーのことを言っている一行です。
He’s a man of his own invention.
(彼は冒険好きな男の子)
invention = 発明、発明品
his own invention とは、誰にも教えられたり、導かれたりしていない、自分で発見したもの、という意味。
つまり a man of his own invention とは、「どんなことでも自分で切り開く男」というような意味になりますね。
私はここは「冒険好きな男の子」と意訳してみました。
I want something that I want
I want something that I want
(とにかくほしいものがあるの)
直訳すると「わたしはわたしがほしいものがほしい」という意味。
とても抽象的な言い方ですよね。
この映画の前半で、ラプンツェルは外の世界に憧れています。
とくに毎年、自分の誕生日に夜空を無数に照らす不思議な灯りに何かがある、と感じている。
しかし、それが何かはわからない。
そんなラプンツェルの漠然とした形にならない想いが、この抽象的な表現に現れているのだと言えます。
Something that I tell myself I need
Something that I tell myself I need
(なくてはならないと思っている何か)
直訳すると「わたしが必要だと自分に言い聞かせている何か」。
この1行は「something that I need(わたしに必要な何か)」というハッキリとした言い方をしていないところがポイントですね。
ラプンツェルは本当はさらわれた王国のお姫様なんですが、そのことを知らない。
つまり自分が何を失っているのかが、わかっていない状態だったんですね。
そんな事実に対して、彼女の認識のちょっとしたズレのようなものが、この一行に、遠回しに表現されているような気がします。
He’s been livin’ in a pure illusion …
この4行は映画の最初の30分のストーリーを要約しているような感じですね。
He’s been livin’ in a pure illusion
She’s gonna come to her own conclusion
Right when you think you know what to say
Someone comes along and shows you a brand new way彼はずっと空想の世界に生きてきた
やがて彼女は自分なりに心を決める
ちょうど言うべき言葉が頭に浮かんだとき
誰かがやってきて新しい手段を示してくれる
conclusion = 結末、結論
1行めは、ライダーのこと。
2行目は、ラプンツェルがゴーテルに「外に出たい」とはっきり頼んでみよう、と心に決めたこと。
3行目は、ラプンツェルがゴーテルに「外に出たい」と頼もうとしたこと。
4行目は、ライダーがやってきたことで、思わぬ城の外に出るきっかけが出来た、ということ。
‘Cause it’s so easy to make believe …
‘Cause
It’s so easy to make believe
It seems you’re livin’ in a dream
Don’t you see that what you need
Is standing in front of you?だって
信じるだけならたやすいこと
あなたは夢の世界に生きているよう
自分が必要としている人が目の前にいるというのに
わからないの?
ここの部分は最初、ラプンツェルが語り手だと思ったんですが、よく読んでみるとこの内容はライダーにも当てはまりますよね。
例えば2行目の「It’s so easy to make believe(信じるだけならたやすいこと)」は、ゴーテルに騙されていたお人好しのラプンツェルのこととも言えますし、空想ばかりしていたライダーのことにも当てはまります。
なので、この5行はおそらく歌い手が2人に向けて言っている部分とも言えますし、ラプンツェルがライダーに、ライダーがラプンツェルにむけて言っているとも解釈できます。
そう考えると、この曲で何度も繰り返される「I need everything I see(目に映るものすべてが必要)」と、ここの4行目からの「Don’t you see that what you need is standing in front of you?(自分が必要としている人が目の前にいるというのに、わからないの?)」との関連もみえてきますね。
あとがき
というわけで、今回は映画『塔の上のラプンツェル(Tangled)』のエンディングテーマ曲『Something That I Want(サムシング・ザット・アイ・ウォント)』の歌詞を解説してみました。
以前ミュージカル映画の「“I Want” song」について解説しましたが、この『塔の上のラプンツェル』には「“I Want” song」が2つあるとも言えますね。
1つ目は最初にかかる『自由への扉(When Will My Life Begin)』
2つ目が今回とりあげた『Something That I Want(サムシング・ザット・アイ・ウォント)』
『自由への扉(When Will My Life Begin)』と比べると、この『Something That I Want(サムシング・ザット・アイ・ウォント)』は結論まで含め、より抽象的な表現を駆使して書かれた歌詞になっていましたね。
新しく覚えられる英語のボキャブラリーはあまりなかったかもしれませんが、英語という言語の抽象的な表現を解釈する練習にはいい回だったと思います。