Mother Knows Best(お母様はあなたの味方)の歌詞(和訳あり)で英語の勉強【塔の上のラプンツェル】

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本日は映画『塔の上のラプンツェル』のミュージカル曲『Mother Knows Bestお母様はあなたの味方)』の歌詞の英語を解説してみたいと思います。

ひとつ前のラプンツェルの回で紹介した『When Will My Life Begin?(自由への扉)』では、ラプンツェルの“I want”が謳われていました。
そしてこちらはそのラプンツェルの“I want”を妨げているものが謳われています。

歌うのはラプンツェルの育てのお母さんであり、この映画の悪役ともいえるゴーテル。

まずは英語の歌詞と私の和訳をご一読ください。
ラプンツェルのパートはカッコで違いをつけてあります。

Mother Knows Best
お母様はあなたの味方

You want to go outside?
Why, Rapunzel

外に出たいですって?
どういうこと、ラプンツェル

Look at you, as fragile as a flower
Still a little sapling, just a sprout
You know why we stay up in this tower

ご覧なさい、花のようにかよわくて
まだ苗木、ただの新芽
わたしたちがあくまでもこの塔にとどまるそのわけを知ってるくせに

“I know but…”

「わかってるわ、でも……」

That’s right, to keep you safe and sound, dear
Guess I always knew this day was coming
Knew that soon you’d want to leave the nest
Soon, but not yet

そうよ、かわいいあなたに、つつがなく暮らしてほしいからなの
いつかこの日がくること、わかってはいたわ
この巣を出ていきたいなんて言い出すんじゃないかってね
そのうちね。でも、まだよ

“But –”

「でも……」

Shh!
Trust me, pet
Mother knows best

しっ!
信じなさい、いい子だから
お母さんが一番よくわかってるのよ

Mother knows best
Listen to your mother
It’s a scary world out there

お母さんが一番よくわかってるのよ
お母さんの言うことを聞きなさい
外の世界は怖いのよ

Mother knows best
One way or another
Something will go wrong, I swear

お母さんが一番よくわかってるのよ
どうしたってね
きっと何かしら問題がおきるに決まってるの、絶対に

Ruffians, thugs
Poison ivy, quicksand
Cannibals and snakes
The plague

ヤクザにゴロツキ
毒ツタウルシに底なし沼
人喰い人種、蛇
伝染病

“No!”

「いやー!」

Yes!

そうなのよ!

“But –”

「でも……」

Also large bugs
Men with pointy teeth, and
Stop, no more, you’ll just upset me

他にも、大きな蟲たち
牙の生えた男、それから
やめた、もうたくさん、心乱れるばかりだわ

Mother’s right here
Mother will protect you
Darling, here’s what I suggest

お母さんはここよ
お母さんが守ってあげる
いい子だから、よくお聞き

Skip the drama
Stay with mama
Mama knows best

茶番はいいから
お母さんといることにしなさい
お母さんが一番よくわかってるのよ

Mother knows best
Take it from your mumsy
On your own, you won’t survive

お母さんが一番よくわかってるのよ
おかあさまを信じなさい
自分だけの力じゃ生きていけないのよ

Sloppy, underdressed
Immature, clumsy
Please, they’ll eat you up alive

みすぼらしくて、しょぼい服
未熟で不器用
勘弁して、食べられちゃうから

Gullible, naÎve
Positively grubby
Ditzy and a bit, well … vague

お人好しで世間知らず
けっこう汚れてるし
天然で、ちょっとばかし、そうね……うすらボケ

Plus, I believe
Gettin’ kinda chubby
I’m just saying ‘cause I wuv you

その上、思うに
ちょっと太ってきたわよね
あなたのことをアイシテいるからこそ言うのよ

Mother understands
Mother’s here to help you
All I have is one request

お母さんはわかってるのよ
お母さんはね、あなたの力になりたいの
わたしが望むことはただひとつ

Rapunzel?

ラプンツェル?

“Yes?”

「うん?」

Don’t ever ask to leave this tower again.

もう2度とこの塔を出たいなんて言わないで

“Yes, Mother.”

「うん。お母さん」

I love you very much, dear.

「とっても愛してるわ、いい子ね」

“I love you more.”

「わたしも、お母さん以上に愛してるわ」

I love you most.
Don’t forget it
You’ll regret it
Mother knows best

わたしこそ、この上なく愛してるわよ
忘れないでね
さもないと後悔することになるわよ
お母さんが一番よくわかってるのよ




目次

Mother knows best

まずはタイトルについて。

Mother knows best

これは「お母さん用語」で、お母さんが子供に何かを言い聞かせるときによく使われる定番の言い回しだそうです。

英語の勉強ポイントは best の解釈ですね。

best は well の最上級なので、

Mother knows well
お母さんはよく知っている

を最高潮にしたものと理解すれば早いですね。
訳すとしたら、「お母さんが物事を一番よくわかっているのよ」みたいな意味ですね。

私も子供の頃に、「お父さんは何でも出来るんだぞ」とか「悪いことしてもお母さんには何でもわかっちゃうんだからね」なんて言い回しをよく親にされましたけれども、そういうノリの物言いだと思います。

この歌詞の場合は、ゴーテルはラプンツェルに塔を出ていってほしくないので、自分の主張に説得力を持たせたいあまりの最上級だと解釈できます。

普通のお母さんは子供の身を案ずるからこそこういう言い方をするんですが、ゴーテルは上っ面はお母さんぶっていても、本心は自分のことしか考えていないところが違いますね。

ここにあえて定番のお母さん言葉を使っているところに皮肉な状況が見てとれます。

お母様はあなたの味方

出典:imdb

Still a little sapling, just a sprout

Still a little sapling, just a sprout
まだ苗木、ただの新芽

sapling = 若木、苗木
sprout = 芽、新芽

ここに出てくる sapling(若木)も sprout(新芽)も「若者」とか「青二才」の暗喩として使われる言葉ですね。

しかし「若木」と「新芽」じゃ、適当に似たような言葉を並べてるだけで、詩的な言葉の変化に乏しいですよね。

こういうボキャブラリーの使い方にゴーテルのめんどくさい気分がよく出ている気がします。

このゴーテルの「めんどくさい気分」は、彼女がこの歌詞を通してラプンツェルを呼ぶ言葉にも表れていますね。
pet とか dear とか darling とか、とにかく言葉を羅列してめんどくさいラプンツェルの口を黙らせたい心理がよく出ているように思います。

safe and sound

That’s right, to keep you safe and sound, dear
そうよ、かわいいおまえにつつがなく暮らしてほしいからなの

ここに出てくる safe and sound という熟語。

safe and sound = 無事に、つつがなく

safe は「安全」でいいですよね。
sound は「音」の意味が知られていますが、形容詞としての用法で「健全な」「安全な」の意味もあります。

これも先ほど解説した「Mother knows best(お母さんが一番よくわかってるのよ)」と同じ「お母さん用語」のひとつで、「大丈夫、安心しなさい」とお母さんが子供の気分をやすめるときによく使う言い回しです。

私はこの熟語といえば、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の以下のセリフをすぐさま思い出します。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』より
MARTY : Mom? That you?
LORRAINE : There, there, now. Just relax. You’ve been asleep for almost nine hours now.
MARTY : I had a horrible nightmare. I dreamed that I went back in time. It was terrible.
LORRAINE : Well, Safe and sound now back in good old 1955.
MARTY : 1955!?

マーティ「お母さん? お母さんかい?」
ロレイン「はいはい。落ち着いて。9時間も眠ってたのよ、あなた」
マーティ「酷い夢を見たよ。過去に戻る夢なんだ。最悪だ」
ロレイン「まあ。もう大丈夫よ。今は古き良き1955年に帰ってきたのよ」
マーティ「1955年だって!?」

上の会話は、映画をご覧になった方はお分かりかと思いますが、暗い部屋でマーティが目覚めて、近くに付き添ってくれている女性が自分のお母さんだと思っているんですね。
実際は、お母さんはお母さんなんですが、過去の若い頃のお母さんだった、というシーンです。
若い頃のお母さんが、目の前の少年を将来の自分の息子だと知らずに safe and sound という言い方をしているところがおもしろかったですね。

One way or another

One way or another
Something will go wrong, I swear

どうしたってね
きっと何かしら問題がおきるに決まってるの、絶対に

One way or another = いずれにせよ、何かにつけ、どうにかして、どっちにしろ

Poison ivy, quicksand

ラプンツェルを怖がらせる言葉がずらずら並びますが、中でも気になったボキャブラリーがこの二語。

Poison ivy, quicksand
(毒ツタウルシに底なし沼)

Poison ivy(ポイズンアイビー)

Poison ivy はそのまま「ポイズンアイビー」という名称の植物で、和名はないそうです。
ちなみにバットマンの漫画に同名のキャラクターがあって、『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』という映画ではユマ・サーマンが演じました。

今回の和訳ではカタカナで「ポイズンアイビー」と書くより、何かイメージのわく日本語の言葉を入れたかったので、「毒性の強いツタウルシのような植物」ということで、「毒ツタウルシ」と訳してみました。

Poison ivy

ポイズンアイビー(Poison ivy)

quicksand(底なし沼)

次に quicksand ですが、これは辞典によると「地砂質の土砂が、浸透水の上昇流によって液体のような状態になる現象」とあります。
英和辞書では「流砂」とか「クイックサンド」と訳されています。

しかしGoogle画像やYouTubeなどで検索してみると、quicksand とは、日本で昔から「底なし沼」と呼んでいるものにあたるようですね。

試しに「底なし沼」を和英辞書で逆引きしてみると bottomless swamp と載っています。
quicksand じゃない bottomless swamp というものが存在するのかどうかは知りませんが、おそらく bottomless swamp とは見た目は沼で、その底で流砂現象が起きているものを指すんじゃないかと思います。

というわけで、まず「流砂」の俗称が「底なし沼」だと考えていいでしょう。

ちょっと勉強になりました。

『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』に出てくる底なし沼(quicksand)のシーン

『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』に出てくる底なし沼(quicksand)のシーン(出典:imdb

Skip the drama

Skip the drama
Stay with mama

茶番はいいから
お母さんといなさい

skip とは「とばす」すなわち「話題を変える」とか「省略する」という意味。

何をとばすのか?

drama とは日本語の「ドラマ」。
ドラマとは、「劇」すなわち「劇的なやりとり」のことをこの場合は指しています。

いうなれば、「駄々をこねたり」「声を荒げて強く主張したり」「泣いてみせたり」そういうめんどくさいやりとりはもうやめて、とにかくお母さんと一緒にいることにしなさい、と言っている一節ですね。

mumsy

Take it from your mumsy
On your own, you won’t survive

おかあさまを信じなさい
自分だけの力じゃ生きていけないのよ

Take it from 〜 = 〜を信じなさい

上記の熟語は take it from me(私を信じなさい)の形で使われることが多いですね。
覚えておくと英会話に使える熟語です。

mumsy = お母さん

この mumsy という言葉はオーストラリアの俗語だそうで、アメリカで使われる場合は「古臭いタイプのお母さん像」が暗示されているそうです。

古いタイプのお母さん像というと、例えばヘアスタイルがダサいとか、おばさんパンツを履いているとか、子供に対して口うるさいとか、そういった類のことですね。

以下は辞書に掲載されていた例文です。

As she became more successful, she changed her mumsy hairstyle for something more glamorous.
(彼女は成功するにつれて、いかにもお母さんて感じの髪型をもっと魅力的なものに変えた)

上は「お母さんぽくてダサい」みたいなイメージが含まれた用例ですね。

この『ラプンツェル』の歌詞の場合は「しつけに厳しいママ」みたいなイメージが裏に隠れているといえます。

underdressed

underdressed という単語が出てきます。

これは反対語である overdressed とセットで覚えると効率的なボキャブラリーですね。

underdressed は、「略式すぎて、または軽装すぎて、不適切な服装」という意味。
これは例えばTシャツ着てオペラ鑑賞に行くとか、寝巻きのまま結婚式に出席するとか、サンダル履いて営業回りするとか、そういうことですね。

この『ラプンツェル』の歌詞の場合は「外の世界に出るために相応しい服装を持っていないでしょ」という感じでしょう。

一方 overdressed は、「着飾りすぎて、不適切な服装」という意味。
これは例えばスーツを着て畑仕事をするとか、紋付袴でスポーツジムに行くとか、ドレスを着てお隣さんに醤油を借りにいくとか、そういうことですね。

overdressed の映画での用例というと、トム・ハンクス主演の『ビッグ』で、主人公のジョッシュがパーティに場違いに子供じみた派手な衣装を着て出席するシーンがありました。
それを見た同僚が言うセリフがこちら。

映画『ビッグ』より
Want to get a load of that guy. He’s a little overdressed.
(見ろよ。ちょっと派手すぎるよな、あの男)

Gullible

Gullible = 騙されやすい

さっき『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の話題を出したので、ついでにこの単語もピックアップしました。
英語のボキャブラリーは何かと関連づけて覚えると記憶に残りやすいということで。

この Gullible という単語が出てくる映画のシーンで私が思い出すのが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のビフのこちらのセリフ。

Your shoe’s untied. (George looks down and Biff hits him on the chin.) Don’t be so gullible, McFly.

お前のクツのひもがとけてるぞ。(ジョージ、下を見る。ビフ、彼のアゴを小突く)そう簡単に騙されるなよ、マクフライ

こちらの動画の1:18からの部分

Ditzy

Ditzy = ボケてる、マヌケな

この Ditzy という単語、あちこち用例を見ていると女性に対してよく使われている印象がありますね。
日本語でいう「天然ボケ」に近いニュアンスかもしれません。

I wuv you

I wuv you = I love you のだらしない言い方

best と most の違い

GOTHEL : I love you very much, dear.
RAPUNZEL : I love you more.
GOTHEL : I love you most.

ゴーテル「とっても愛してるわ、いい子ね」
ラプンツェル「わたしも、お母さん以上に愛してるわ」
ゴーテル「わたしこそ、この上なく愛してるわよ」

このやりとりの中に I love you most という一文がありますね。
この曲のタイトルは『mother knows best』ですが、ここで best と most はどう違うのか、という疑問がわいてきます。

best と most、どちらも最上級の副詞として動詞を修飾しているわけですが、簡単にいうと

best は先ほども言ったように、well の最上級なので、質の問題。
副詞として動詞 know(知っている)を修飾しているわけですが、それは知識量の問題ではなく、「誰よりもいちばん正しい」という意味になるんですね。

most は二言前に出てくる very much の最上級なので、量の問題。
ちなみにその比較級が直前の行に出てくる more に当たりますね。
こちらは親子ふたりが空っぽの言葉で愛情の分量を競い合っているんですね。

あとがき

本日は映画『塔の上のラプンツェル』のミュージカル曲『Mother Knows Best(お母様はあなたの味方)』の歌詞の英語を解説いたしました。

この歌詞の内容をひと言でまとめると、「ゴーテルが、ただラプンツェルを塔にとどまらせ続けたいだけのために、お母さんぶって脅す歌」ということになりますね。

それに対してラプンツェルは、あくまでもお母さんが自分のためを思って言ってくれていると信じ込んでいる様子です。

ゴーテルの性悪さと、ラプンツェルの人のよさ(いわゆる Gullible さ)が歌詞によく現れていますね。