「ささやかなものですが……」を英語で?【サウンド・オブ・ミュージック】

トライフル

ゲオルグがエルザとの婚約を解消する直前の会話は、とてもロマンチックで悲哀に満ちた素晴らしい文章ですね。

シーンまるごと引用したいところですが、あまり長いとあれなので、今日はエルザのセリフの一部をピックアップしてみました。

You have no idea what kind of trouble I’m having trying to decide what to give you for a wedding present. Oh, I know. I’m enough. But I do want you to have some little trifle for the occasion. At first I thought of a fountain pen, but you’ve already got one. Then I thought perhaps a villa in the south of France, but they are so difficult to gift-wrap. Oh, Georg, how do you feel about yachts? A long, sleek one for the Mediterranean or a tiny one for your bathtub, huh?

あなたにあげる結婚記念の贈り物、なににしようか、どれだけわたしが頭を悩ましてるか、知らないでしょ。ああ、わかってるの、わたしさえいればじゅうぶんだってこと。でもこの機会になにかささやかなものを受け取ってほしくて。最初は万年筆なんてどうかな、って思ったんだけど、あなた、もう持ってるしね。それで、南フランスの別荘も考えたんだけど、ギフト包装するの大変でしょ。そうだ、ゲオルグ、ヨットなんてどう? 地中海に浮かぶ長くてピカピカの、それとも、あなたのお風呂に浮かべるちっちゃいのがいい?




ささやかだけど、本当はささやかじゃないかもしれない trifle

このなかで注目したいのがこちらの一文のこの単語。

I do want you to have some little trifle for the occasion.
(この機会にぜひ、なにかささやかなものを受け取ってほしいの)

trifle = ささいなこと、わずかなこと

よく日本でも贈り物を渡すとき、「つまらないものですが……」と言って渡しますけど、英語にもほぼ同じ表現があるんですね。

この言葉の他の用例で思い出すのが、『アマデウス』という映画。

モーツァルトが宮廷に呼ばれてやってくる直前のシーンで、サリエリが歓迎のマーチを作曲するんですね。
その楽譜を皇帝に渡すときに、サリエリが言うセリフがこちら。

I hope you won’t find it improper, but I’ve written a march in his honor. [中略] Just a trifle, of course.
(不適切でしたらお許しください。実はわたくし、歓迎のマーチを作曲してまいりました。[中略] もちろん、ささやかなものですが)

とても有名なシーンなので、映画をご覧になった方はよく覚えているかと思います。

この後モーツァルトがやってきて、この「ささやかな」歓迎のマーチを、その場の即興で名曲にアレンジしてサリエリに才能の違いを見せつけるんですね。
サリエリはへりくだって言っていたつもりが、本当にささやかなものにされちゃうわけです。

さてこの trifle という言葉、人に贈り物を渡す以外の状況で使われる場合はどういう用例があるのかと探してみたところ、ヒッチコックの『鳥』という映画で、こんなセリフがありました。

Annie : Did she seem a trifle distant?
Melanie : Mm, a trifle.

アニー「あの人、ちょっとよそよそしくなかった?」
メラニー「うん。ちょっとね」

ここではいわゆる a little とほぼ同じような使い方ですが、眉をしかめて「ちいっとばかし」みたいなニュアンスが入る感じがします。
このヒッチコックの『鳥』の会話では、本当は心の中ではとても気になっていることなのだけれど、人のことを陰であまり悪く言いたくないので、trifle(ちょっと)と付け加える、のような感じで。

もともとこの trifle は語源になった言葉が「詐欺」「無駄話」「あざ笑う」などを意味する trufle, tuffe で、ここから「とるに足らない小さなもの」を意味する言葉になったようです。

用例を振り返ってみると、「ささいなこと」「わずかなこと」の意味の裏に、語源のニュアンスがひそんでいる気がしますね。

この『サウンド・オブ・ミュージック』のエルザのセリフは、南フランスの別荘だとか、地中海に浮かぶヨットだとか、ぜんぜんささやかじゃありません。
金は有り余るほど持っているのに、孤独なエルザの心情が現れてる気がする、と言ったら深読みしすぎでしょうか。

ちなみにトライフル(Trifle)という名前のイギリスのデザートがありますね(この記事の冒頭画像)
なぜそういう名前になったのかは不明だそうですが、「とるにたらない気ままなおしゃべり」からきたという説と、「あり合わせの残りもので作ったデザート」だからという説などがあるようです。

その他の主なボキャブラリー

You have no idea 〜 = 〜を知らないでしょう

for the occasion = この機会に

sleek = なめらか、光沢のある、ピカピカの

まとめ

長さの問題もあって一部しか取り上げませんでしたが、このシーンのエルザとゲオルグの会話は最初から最後まで素晴らしい名文ですので、『サウンド・オブ・ミュージック』で英語の勉強をしている方は、ぜひ一度はテキストに当たって、テキスト通りに聴こえてくるまで何度も繰り返し聴いてほしいです。

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