格調高い修道院での会話で英語の勉強【サウンド・オブ・ミュージック】

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眠っている天使

ゲオルグへの愛に気づいてしまい、修道院へと帰ってきたマリアが、院長に悩みを打ち明けるシーン。

ここの会話はもう名文というか、ほとんど文学作品ですね。

しっかり分析して、英会話の肥やしにしたいところです。

まずは一読してみてください。

Reverend Mother (以下RM) : Are you in love with him?
Maria : I don’t know! I don’t know. The baroness said I was. She said that he was in love with me. But I didn’t want to believe it. There were times we looked at each other. I could hardly breathe.
RM : Did you let him see how you felt?
Maria : If I did, I didn’t know it. That’s what’s been torturing me. I was there on God’s errand. To have asked for his love would have been wrong. I couldn’t stay. I just couldn’t. I’m ready at this moment to take my vows. Please help me.
RM : Maria. The love of a man and a woman is holy, too. You have a great capacity to love. What you must find out is how God wants you to spend your love.
Maria : But I pledged my life to God. I pledged my life to his service.
RM : My daughter, if you love this man, it doesn’t mean you love God less. No. You must find out. You must go back.
Maria : Oh, mother, you can’t ask me to do that. Please let me stay. I beg.
RM : Maria. These walls were not built to shut out problems. You have to face them. You have to live the life you were born to live.

修道院長「彼を愛しているのですか?」
マリア「わかりません! わからないんです。男爵夫人がそうだと、彼もわたしを愛してるんだと、そう言うんです。でも信じたくありません。彼と見つめ合ったひとときがあって。わたし、息が止まりそうでした」
修道院長「彼もあなたの気持ちに気付いたのですか?」
マリア「気付かれたのだとしたら、わたしが無意識にそんな態度をしてしまっていたんです。それを考えると苦しくて。わたしは神のしもべとして遣わされたのに。彼の愛情を求めるなんて、間違ってます。もうダメです、あそこにはいられません。今はもう独り身を誓う覚悟ができています。どうかご加護を」
修道院長「マリア。男女の愛も神聖なものですよ。あなたにも人を愛する本能が生まれつき備わっているのです。神はその愛をどのように花開かせるために与え給うたのか、それを見極めるべきです」
マリア「でも、わたしはこの命を神に、神への奉仕に捧げると誓いました」
修道院長「我が娘よ、彼を愛したとて、それで神への愛が薄れるわけではないでしょう。間違っていますよ。はっきりさせるのです。お戻りなさい」
マリア「ああ、院長さま。それだけは勘弁してください。ここにいさせてください。この通りです」
修道院長「マリア。ここの壁は問題から目を背けるためにあるのではありませんよ。立ち向かうのです。あなたがこの世に遣わされた意味、それをまっとうしなさい」




目次

I didn’t know の意味は「知らない」とは限らない

4言目に If I did, I didn’t know it. という一文があります。

not know というと「知らない」という意味に受け取りがちですが、「気がつかなかった」という意味になることも結構あります。

つまりここは、「もし、わたしがそうしていたのだとしたら、わたしが気がつかないうちにそうしていた」という意味になるんですね。

なので、ここは「彼もあなたの気持ちに気付いたのですか?(Did you let him see how you felt?)」という質問に対する答えですから、「気付かれたのだとしたら、わたしが無意識にそんな態度をしてしまっていたんです」と訳しました。

日常の英会話でよく使われる表現 errand

その後に「I was there on God’s errand(わたしは神の使いであそこに行った)」という一文がありますね。

この errand(使い)という単語、日常会話でよく使われる表現ですので、覚えておくとよいです。

通常は、

I have an errand to run
(ちょっとヤボ用で出かけてくる)

みたいな感じで使います。

実は私、この errand という言葉をこの『サウンド・オブ・ミュージック』のこのシーンで初めて知ったので、誰かに遣わされて出かける場合のみに使用する言い回しだとばかり思っていました。

しかしこの errand という言葉、けっこう広い意味で使えるんですね。

先日『チアーズ(Cheers)』というTVドラマを見ていたら、

Listen, Sam, old man, I have an errand to run. Diane will stay here. I’d appreciate it if you would keep an eye on her.
(なあ、サム、ちょっとヤボ用で出ないといけないんだ。ダイアンはここで待たせとくんで、見ててくれないか)

というセリフがありました。

このシーンは別れた奥さんに指輪を返してもらいにいく、という場面なので、誰に遣わされたわけでもなく、自分の用事なんですね。

それでアレっと思って調べなおしてみたところ、errand という言葉は基本的に「使い」という意味の言葉ですが、日常会話で使う場合は、誰かに用事を頼まれる場合に限定せず、「ちょっとそこまで」「ちょっとナニで」みたいなノリで、広く使える言葉のようです。

ふりかえってよく考えてみたら、日本語でも、誰に頼まれたわけでもない「買い物」のことも、普通に「お使い」って言いますもんね。

灯台下暗しでした。

意外と日常でよく耳にする言葉 pledge

上記の errand のように、いっけん宗教っぽい言葉も、けっこう日常生活で耳にしたりします。
西洋の言葉は全体的に日本語と比べて意義に奥行きがあるんですね。

同様の例でその下の pledge という言葉にも注目したいです。

But I pledged my life to God. I pledged my life to his service.
(でも、わたしはこの命を神に、神への奉仕に捧げると誓いました)

pledge = 固い約束を交わす、誓う
pledge one’s life = 命をかけて誓う

この pledge という言葉、私は自分から使ったことはほとんどありませんでしたが、あちらに住んでいるとあちこちで耳にします。

例えば政治家の「公約」の意味。

映画『時計じかけのオレンジ』より
Our party promised to restore law and order and to make the streets safe for the ordinary peace-loving citizen. This pledge is now about to become a reality.
(我々の政党は法と秩序をとりもどし、平和を愛する一般市民の皆様に安全な街づくりをお約束していました。この公約が今、現実のものとなろうとしています)

また、アメリカの学校で毎朝やらされるという、アメリカ合衆国への忠誠の誓いを Pledge of Allegiance と言いますね。

映画『グッドフェローズ』より
How could I go to school after that and pledge allegiance and sit through good government bullshit?
(あんなことがあった後で、どうしてまた学校に戻って忠誠を誓って政府のきれいごとに付き合えるってんだ?)

まとめ

今日とりあげたのは宗教的で文学的な会話でしたが、けっこう英会話に役立ちそうな表現や概念がいっぱいありましたね。

こういう映画の格調高いシーンで勉強すると、英会話も豊かなものになりそうです。