英語の boom と和製英語の「ブーム」は違うのか【イングロリアス・バスターズ】

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きのこ

アルド・レイン中尉とドイツ兵捕虜ヴェルナーとの会話。

本日はここから英語のボキャブラリーをピックアップしてみます。

アルド中尉は近くに潜んでいるドイツ斥候隊の詳細な情報を引き出そうと、ヴェルナーをユーモアたっぷりに脅すんですね。

ここのアルド中尉のセリフがまたタランティーノ節なんです。

映画が始まって30分26秒あたりの部分。

LT. ALDO : Werner, if you heard of us, you probably heard we ain’t in the prisoner-taking business. We in the killing Nazi business, and, cousin, business is booming. Now, that leaves two ways we can play this out. Either kill you or let you go. Whether or not you’re going to leave this ditch alive depends entirely on you. Up the road a piece, there’s an orchard. Besides you, we know there’s another Kraut patrol fucking around here somewhere. (中略)You got to tell me how many they are, and you got to tell me what kind of artillery they’re carrying with them.
WERNER : You can’t expect me to divulge information that would put German lives in danger.

アルド中尉「ヴェルナー、もうどこかで聞いたかもしれねえが、オレたちは捕虜の捕獲業はやってねえ。ナチ駆除業で食ってる。おかげさまで商売は大繁盛だ。さてそんで、今回のヤマはふたつにひとつ。オメーをぶっ殺すか、逃すかだ。オメーがこのドブ沼から生きて出られるか、そいつはまったくもってオメー次第っつうこった。この先すぐのところに果樹園があるよな。オメーのいた斥候隊の残りがまだあの辺のどこかに潜んでんのはわかってんだ。(中略)ヤツらの数は何人で、どんな兵器を持ってやがるのか、教えろや」
ヴェルナー「同胞を危険にさらすような情報は明かすわけにはいかないな」




目次

和製英語の「ブーム」とは異なる英語の boom

ここの会話で注目の単語がこちら。

boom = 急激に活性化する、いきなり急増する

booming は boom の現在分詞ですが、boom は本来、「ブーン」という音をあらわすオノマトペです。

そこから「にわかに騒がしくなる」のようなイメージに発展して、「急激に活性化する」「いきなり急増する」のような使い方になったんでしょうね。

日本語にも「ブーム」って言葉がありますが、おそらくこの boom という英単語を受けて誰かが使い始めた和製英語だと思うので、それだけに意味も似ています。

しかし似て異なるとはこのことですね。

日本語の「ブーム」は「流行」みたいな意味ですが、英語で「流行」を言い表そうとすると、むしろ trend とか fad などの単語の方が適切でしょう。

例えばこんな感じで。

映画『雨に唄えば』より
That’s stupendous! This will start a new trend in musical pictures.
(こいつぁ素晴らしい! ミュージカル映画の新たなブーム到来だ)

映画『未来は今』より
How do you like that? They’re all wearing them upstairs. It’s a fad.
(いいだろ、これ? 天国ではみんなつけてるよ。ブームなんだ)

一方、英語の boom は日本語の「ブーム」よりはちょっと意味が広くて、それでいて「ブーム」そのものの訳語としてはド真ん中じゃないんですね。

例えばこのブログのアクセスが急激に集中したりすると、ワードプレスの管理画面に

your stats are booming!
(アクセスが急増しています!)

なんて表示がよく出ます。

こういった何かが「急に増える」みたいな意味から、この『イングロリアス・バスターズ』の用例のように、商売が「大繁盛する」まで、いろいろ使える言葉なんですね。

ちなみに boom boom と連ねると、性行為を表すスラングになります。
そういえば、そんな歌がありましたね、昔。
アイドルの勇直子がカバーしたやつはシングル持ってましたっけ。
(んな話はどうでもいいですね)

その他の注目ボキャブラリー

ain’t = am not、are not、is not などの口語表現

play out = 最後までやる

ditch = 溝、ドブ
「まずい状況」の比喩としてよく使われます。
動詞になると「(ドブに)捨てる」という意味にもなります。

depend on 〜 = 〜次第

up the road a piece = この先のすぐ向こう
down the road a piece って言い方もありますね。
ちょっと地形の高いところを指す場合は up の方を使い、低いところを指す場合は down の方を使います。
平坦な地形の場合は、お好みでどちらを使っても構わないそうです。
a piece は「すぐそこ」「それほど遠くない」みたいなニュアンスでくっついているので、up the road や down the road だけでも使えます。

orchard = 果樹園

Kraut = ドイツ語で「キャベツ」
戦争中に「ドイツ人」の蔑称として使われた

artillery = 砲、大砲

divulge = 暴露する

おわりの英語の勉強に関係ない雑感

この後、哀れなヴェルナーはイーライ・ロス演じるドニー・ドノウィッツ軍曹(ユダヤの熊)にバットで撲殺されてしまうんですね。

そういえば私は30年近く前、アメリカに留学して語学学校に通っていたことがあるんですが、クラスメートにはいろんな国の人がいました。
フランス人、ドイツ人、イスラエル人、イタリア人、スペイン人、中国人、韓国人、タイ人、南米人、などなど。

みんな和気あいあいと楽しくクラスでディスカッションをしたり、週末はパーティーで酒を飲んだりしていましたね。

この映画のドイツ人たちとユダヤ人たちも、生まれた時代が違えばあんな風に同じ学校で机を並べて仲良く勉学に励んでいたりしていたかもしれないなと思うと、まあつくづく戦争はいかんなと、思う今日この頃です。