私がディズニー映画『アナと雪の女王』で初めて知った表現のひとつが「Duck!(避けて!)」です。
こちらのシーンに出てくるセリフですね。
0:33のところ。
映画本編では42分39秒のあたりです。
duck というと、日本語化した英語「ダック」…
つまり「ドナルドダック」とか「北京ダック」の「ダック」を思い浮かべますね。
duck = [名詞] カモ、アヒル
しかしこれが動詞として使う場合、「ひょいとかわす」「頭を下げる」などの意味になるんですね。
duck = [動詞] ひょいとかがむ、頭を下げる、ひょいとかわす、避ける、水にもぐらせる
この『アナ雪』では「ひょいとかがむ」「ひょいとかわす」などのニュアンスで使われていますね。
アヒルやカモはよく頭を水につっこみますよね。
名詞の duck も動詞の duck も、そのイメージから枝分かれした類義語だと言えます。
「ひょいとかがむ」と「ひょいとかわす」の用例
他の映画を探してみたら、けっこうあちこちで使われていました。
映画『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』より
(1:33のところ)
最近では、以下のジミー・ファロン(Jimmy Fallon
)のトークショーを見ていたら、ゲストの女優フェリシティ・ジョーンズ(Felicity Jones)が「duck」という言葉を実用していました。
1:49あたりのところです。
それから、duck の用例で、こんなフレーズを見つけました。
duck and cover = 伏せて隠れよ
これは1950年代から80年代までの米ソ冷戦時代、アメリカ政府が提唱した核攻撃を受けたときの防御法です。
「核ミサイルが落ちてきて、ピカッと光ったら、すぐに身を低くして、机の下や壁の横などに隠れ、顔を下にして両手で頭を抱えましょう」ということを謳ったフレーズです。
下は1951年に制作され、60年代にわたってアメリカの小学校などで上映された『Duck and Cover』という教育ビデオ。
Duck(カモ、アヒル)ならず、「カメを見習いましょう」とか言ってるところがおかしいですね。
「水にもぐらせる」の用例
次に「水にもぐらせる」の用例。
私の大好きなザ・フーのロックオペラを映画化した『トミー』から『いとこのケヴィン(Cousin Kevin)』という曲の歌詞。
主人公トミーを、いとこのケヴィンがいじめまくるミュージカルシーンです。
映画『トミー』より
Ducked your head under and started to laugh?
(お前の頭を水につけて笑ってやろうか?)
1:21の部分
「避ける」の用例
次は「避ける」の用例。
duck は物理的に「ひょいっとかわす」だけじゃなく、人物や義務や責任などから「逃げまわる」みたいな意味でも使えます。
映画『リベンジ・マッチ』より
DANTE : What’d I tell you? I told you to come in 1:00.
BILLY : I came early. I wanted to see my old friend. He’s been ducking me 30 years. I missed him.ダンテ「何を聞いてたんだ? 1時に来いって言ったろ」
ビリー「早めに来たんだ。旧友と会いたくてね。30年間こいつは俺を避けてきたからな。寂しかったぜ」
以下の動画の0:33から
あとがきにかえて – duck を使った熟語あれこれ
本日は映画『アナと雪の女王』のセリフをきっかけに、duck の動詞の用法をいろいろご紹介しました。
ちなみに日本語で「カモ」のことを「騙しやすい人」「騙して利益を得るのに格好の餌食」みたいな意味がありますよね。
調べてみたら、英語の duck(カモ)も似たような意味で使われるんですね。
というわけで、本日は最後に名詞としての duck を使った熟語をいくつか紹介したいと思います。
sitting duck = 無防備な人、攻撃しやすい人、騙しやすい人
これは文字通りには「座っているカモ」という意味ですが、日本語の「カモ」の意味とちょっと似ていますね。
映画『ファイヤーフォックス』より
Missiles avoided. Where did they come from? I don’t know what it is. I’m a sitting duck.
(ミサイル回避。どこから来た? 状況がわからん。このままじゃ格好の標的だ)
それからこんな熟語もありました。
dead duck = (計画・人など)ダメなもの、役立たず、もう見込みがないもの
lame duck = 死に体、役立たず
lame duck は日本語でも政治用語で「レームダック」としてよく使われるのを聞きますね。
以上、本日は duck という言葉をご紹介しました。